フレイルを予防して介護導入を遅らせるには?

日本では高齢化が進む中、健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の維持向上が大きな課題となっています。その解決策の1つとして注目されているのが、フレイルへの対策です。

フレイルとは、加齢により心身の活力が低下した状態を指します。健康と要介護の中間的な段階にあたりますが、適切なケアを行えば改善が可能とされています。フレイルを予防し、健康寿命を延ばすことが、高齢者のQOL向上につながるのです。

そのためには、高齢者自身が主体的に健康管理に取り組むことが重要です。フレイル状態を早期に発見し、適切な対策を講じることで、要介護状態への進行を防ぐことができるからです。医師や自治体職員などの支援を受けながら、日々の食事、運動、睡眠などの生活習慣を見直し、フレイル予防に努めましょう。

フレイルとは

フレイルとは、先述した通り、高齢者の健康な状態と要介護状態の中間にあたる状態を指す概念です。筋力や身体能力の低下を特徴としていますが、適切な対応により改善可能な状態でもあります。

この概念は、英語の「Frailty(虚弱)」に由来しており、2014年に日本老年医学会が提唱した新しい概念です。高齢者の健康状態をより細かく分類し、適切なケアを提供するために導入されました。

フレイルに早めに対応することの重要性

フレイルを早期に認識し、適切に対応することの重要性は非常に高いです。フレイルの段階で適切な介入を行うことで、要介護状態への進行を防ぐことが可能だからです。

具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • 筋力や身体機能の維持・改善
  • 転倒や骨折のリスク低減
  • 認知機能の維持
  • 社会参加の継続

このように、フレイルへの早期対応は、高齢者の健康維持と生活の質の向上に直結するのです。

フレイルチェック

フレイルチェックは、高齢者の健康状態を簡単に評価するための方法です。ここでは、代表的な2つのチェック方法である指輪っかテストとイレブンチェックについて詳しく説明します。

まず、それぞれのチェック方法の概要と結果の見方を比較してみましょう。

チェック方法概要結果の見方
指輪っかテスト人差し指と親指を輪にしてふくらはぎの最も太い部分を囲む「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」の3段階で評価
イレブンチェック栄養、口腔、運動、社会性・こころの4要素に関する11の質問青の丸が多いほど健康的、赤の丸が6つ以上でフレイルリスクが高い

指輪っかテストとは

指輪っかテストは、人差し指と親指を輪にしてふくらはぎの最も太い部分を囲む簡易的なチェック方法です。

テストの結果は、以下の3つに分類されます。

  • 「囲めない」
  • 「ちょうど囲める」
  • 「隙間ができる」

指輪っかテストの目的

指輪っかテストは、筋力低下(サルコペニア)の危険度を測る指標として重要な意味を持っています。特に、「隙間ができる」グループは、サルコペニアや死亡リスクが高い傾向が確認されています。

実際のデータを見ると、「隙間ができる」人のサルコペニア発症率は「囲めない」人の6.6倍、その後2年間の新規サルコペニア発症率は3.4倍にもなります。さらに、「隙間ができる」人の死亡率は「囲めない」人より3.2倍高いことが分かっています。

イレブンチェックとは

イレブンチェックは、栄養、口腔、運動、社会性・こころの4つの要素に関する11の質問で構成されています。

各質問の回答は「はい」と「いいえ」の2択で、結果は以下のように解釈します。

  • 青の丸が多いほど健康的である
  • 赤の丸が6つ以上でフレイルリスクが高まる
  • 赤の丸が1つ増えるごとにリスクが2倍になる

イレブンチェックの目的

イレブンチェックは、フレイルの身体的・精神的・社会的な要因を総合的に評価する指標として重要な役割を果たしています。

特に、サルコペニアのリスクと注意点について理解しておく必要があります。

  • 筋力や筋肉量の低下が基礎代謝やエネルギー消費の低下を引き起こす
  • 食欲や食事量の低下による悪循環の危険性がある
  • 転倒や骨折、認知症リスクの増加の可能性がある
  • 65歳を過ぎてのふくらはぎの細さは危険信号と考えるべき

フレイルチェックを活用し、高齢者自身が主体的に健康管理に取り組むことが、フレイル予防と生活の質の維持向上につながるのです。

フレイル予防の重要性と実施方法

フレイルを予防し、介護導入を遅らせるためには、高齢者自身が主体的に健康管理に取り組む必要があります。医師や自治体職員はサポート役として、高齢者の自立した健康づくりを支援することが求められます。

主体的な取り組みの必要性

フレイル予防において、高齢者自身が主体的に健康管理に関わることが何よりも重要です。医療従事者や周囲の人々は、高齢者の自立した健康づくりをサポートする立場であり、高齢者本人の意欲と行動が欠かせません。

高齢者が自ら健康状態を把握し、改善に向けて積極的に取り組むためには、以下のような働きかけが有効でしょう。

  • フレイルの概念や予防法について、分かりやすく丁寧に説明する
  • 高齢者自身でできるチェック方法を紹介し、定期的な実施を促す
  • 健康的な生活習慣の重要性を伝え、実践を支援する
  • 高齢者の自主性を尊重し、過度な介入は控える

定期チェックと健康状態の見直し

フレイルの早期発見と対策のためには、高齢者自身が定期的にチェックを行い、自分の健康状態を把握することが大切です。指輪っかテストやイレブンチェックなど、簡単にできる方法を活用して、少なくとも年に1回はチェックを行うことが推奨されます。

チェックの結果、フレイルのリスクが高いと判断された場合は、速やかに生活習慣の見直しに着手しましょう。早期の対応によって、要介護状態への進行を防ぐことが可能です。一方、問題がなかった場合でも、現状に満足せず、さらなる健康維持・増進を目指すことが大切です。

生活習慣の見直し

フレイルの主な要因である筋力低下や栄養不足を防ぐには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が欠かせません。高齢者自身が生活習慣を見直し、改善に取り組むことが求められます。

具体的には、以下のような点に注意しましょう。

  • たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを十分に含む食事を心がける
  • 無理のない範囲で、筋力トレーニングやウォーキングなどの運動を行う
  • 睡眠時間を確保し、質の高い睡眠を取るように努める
  • 口腔ケアを怠らず、噛む力や飲み込む力を維持する

栄養管理のポイント

フレイル予防において、適切な栄養管理は特に重要です。加齢に伴う筋肉量の減少を防ぎ、体力を維持するためには、十分なたんぱく質と適切なエネルギー量の確保が不可欠です。

高齢者の栄養管理のポイントは以下の通りです。

  • 1日あたりの必要たんぱく質量は体重1kgあたり1.0~1.2g
  • 脂肪やお菓子の取りすぎに注意し、適正なエネルギー量を維持する
  • ビタミンやミネラルが豊富な野菜、海藻、きのこ類を積極的に取り入れる
  • 食欲が低下した場合は、少量でも栄養価の高い食品を選ぶ

バランスの取れた食事は、フレイルの予防と改善に直結します。管理栄養士など専門家のアドバイスを参考に、自身に合った食生活を心がけましょう。

まとめ

フレイルとは、高齢者の健康と要介護の中間状態を指す概念で、早期に発見し適切に対応することが重要です。フレイルを予防し、健康寿命を延ばすことが、高齢者のQOL向上につながります。

フレイルのチェック方法として代表的なのは、ここで紹介した指輪っかテストとイレブンチェックです。指輪っかテストは、ふくらはぎの太さから筋力低下の危険度を測る指標です。また、イレブンチェックは、フレイルの身体的・精神的・社会的な要因を総合的に評価する指標として役割を果たしています。

フレイル予防において、高齢者自身が主体的に健康管理に取り組むことが何よりも重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、日々の生活習慣を見直し、改善に努めましょう。

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