フレイルって何?~サルコペニアとの違いとは

フレイルという言葉を耳にしたことはありますか?最近よく聞くようになった言葉ですが、フレイルとは一体どのような状態を指すのでしょうか。

本記事では、フレイルの定義やその特徴、さらにはその予防と対策について詳しく解説します。

フレイルは健康と要介護状態の中間に位置する段階であり、このタイミングで適切なケアを行えば再び元気な状態に戻ることが可能です。

しかしながら、フレイルの兆候を見逃し適切に対処しなければ、要介護状態に進行するリスクが高まります。
そのため、早期発見と予防が重要です。

フレイル予防の具体的な方法やその重要性について探っていきましょう。

フレイルとは

フレイルという言葉を耳にする機会が増えてきましたが、その意味や概念について理解している人は多くありません。ここでは、フレイルの定義と概念について詳しく解説します。

フレイルの語源と意味

フレイルという言葉は、英語の「Frailty(フレイルティ)」に由来しています。Frailtyには「虚弱」や「老衰」といった意味があり、加齢に伴う心身の機能低下を表す言葉として使われています。

つまり、フレイルとは、高齢者が加齢により心身の活力が低下し、生活機能が障害されている状態を指します。

日本老年医学会によるフレイルの定義

日本老年医学会では、フレイルを以下のように定義しています。

「高齢者が加齢に伴い心身の活力が低下し、生活機能が障害されるが、適切な介入で改善可能な状態」

この定義から、フレイルが可逆的な状態であり、適切なケアや支援により健康な状態に戻る可能性があることが分かります。早期発見と適切な介入が重要だと言えるでしょう。

健康状態と要介護状態の中間段階としてのフレイル

フレイルは、健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置づけられています。つまり、フレイルは健康と要介護の狭間にある状態と言えます。

下表は、健康状態、フレイル、要介護状態の特徴を簡単にまとめたものです。

健康状態フレイル要介護状態
心身の機能が維持されている心身の活力が低下し、生活機能が障害されている常時介護が必要な状態
自立した生活が可能適切な介入で改善可能自立した生活が困難

フレイルの段階で適切な対応を行えば、健康な状態に戻ることができます。一方で、放置すると要介護状態に移行するリスクが高まります。

フレイルから要介護状態への移行

フレイルの状態が進行すると、最終的には要介護状態へと移行することが多いとされています。フレイルから要介護状態への移行を防ぐためには、フレイルの早期発見と適切な介入が不可欠です。

特に、以下のようなリスクがフレイルの進行や要介護状態への移行を促進します。

  • 転倒による骨折
  • 入院による身体機能の低下
  • ストレスへの耐性低下
  • 感染症など軽度の疾患の重症化

家族や医療者がフレイルの兆候を早期に発見し、適切な対応を行うことで、こうしたリスクを軽減することができるのです。

フレイルの診断基準

フレイルの診断基準について見ていきましょう。フレイルの診断には、Friedらの基準が用いられています。

Friedの基準

L P Friedらの基準では、以下の5項目が設定されています。

  • 体重減少
  • 疲労
  • 歩行速度低下
  • 握力低下
  • 身体活動量低下

これらの項目は、フレイルの特徴を捉えるために選ばれた指標です。各項目の詳細を確認していきましょう。

フレイル判定の5項目

項目判定基準
体重減少意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
疲労週3~4日以上「何をするのも面倒」と感じる
歩行速度低下通常より歩く速度が遅い
握力低下握力が基準値以下
身体活動量低下日常的な運動や活動が減少している

体重減少は、栄養状態の悪化を示唆する指標です。疲労は、身体的・精神的な活力の低下を表します。歩行速度や握力の低下は、身体機能の衰えを意味します。また、身体活動量の減少は、生活機能の障害につながる可能性があります。

これらの項目は、高齢者の心身の状態を多角的に評価するために選ばれています。各項目の該当数によって、フレイルの判定が行われます。

フレイルとプレフレイルの判定

Friedの基準では、5項目のうち該当する項目数によってフレイルの判定が行われます。

  • 3項目以上該当:フレイル
  • 1~2項目該当:プレフレイル

フレイルと判定された場合、心身の活力が大きく低下し、生活機能の障害が起きている状態です。一方、プレフレイルは、フレイルの前段階であり、適切な介入によって健康な状態に戻る可能性が高い状態を指します。

フレイルの診断基準を理解することは、高齢者の心身の状態を把握し、適切な支援につなげるために重要です。早期発見と介入によって、フレイルの進行を防ぎ、健康寿命の延伸につなげることができるでしょう。

フレイル状態がもたらす影響

健康リスクの増加

フレイルは、高齢者の健康状態に大きな影響を及ぼします。フレイル状態に陥ると、さまざまな健康リスクが増加し、死亡率や身体能力の低下が起こりやすくなるのです。

具体的には、フレイルの高齢者は、健常な高齢者と比べて、病気にかかるリスクが高まり、入院の可能性も増加します。また、身体機能の低下により、日常生活動作(ADL)の自立度が下がり、介護が必要になる確率も上昇します。

さらに、フレイル状態は、高齢者の生命予後にも関連しています。フレイルの高齢者は、健常な高齢者よりも早期に死亡する可能性が高いことが知られています。

フレイル状態の健康リスク
病気のリスク高い
入院の可能性高い
ADL自立度低い
平均寿命短い

ストレス耐性の低下と疾患の重症化リスク

フレイル状態は、高齢者のストレス耐性の低下をもたらし、疾患の重症化リスクを高めます。健常な高齢者なら回復できるような軽度の病気でも、フレイルの高齢者の場合、重症化する可能性があるのです。

また、フレイル状態の高齢者は、環境の変化に対応することが難しくなります。新しい環境や状況に置かれると、混乱したり、感情をコントロールすることが困難になったりすることがあります。

ストレス耐性の低下は、免疫機能の低下とも関連しています。免疫力が下がることで、感染症にかかりやすくなったり、治癒が遅れたりするリスクが高まるのです。

フレイル状態のストレス低下と重症化リスク
軽度の疾患が重症化しやすい
環境変化への適応力低い
感情コントロール不安定
免疫機能低下

悪循環リスク

フレイル状態の高齢者は、転倒のリスクが高く、骨折などの重大な怪我につながる可能性があります。また、入院することで、さらにフレイルが進行し、寝たきりになってしまうリスクも高まります。

転倒や入院は、フレイルの悪循環を引き起こす大きな要因です。怪我や病気で動けなくなることで、筋力や体力がさらに低下し、フレイルが進行します。そして、回復が困難になり、寝たきりや要介護状態に陥ってしまうのです。

したがって、フレイルの高齢者には、転倒予防や入院回避のための取り組みが重要です。住環境の整備、適切な運動、栄養管理などを行い、フレイルの進行を防ぐことが求められます。

フレイル状態の悪循環リスク
転倒リスク高い
骨折リスク高い
入院後の回復力低い
寝たきりリスク高い

このように、フレイル状態は、高齢者の健康や生活に深刻な影響を及ぼします。早期発見と適切な介入により、フレイルの進行を防ぎ、健康寿命を延ばすことが重要なのです。

フレイルとサルコペニアの違い

フレイルとサルコペニアは、高齢者の健康状態を表す重要な概念ですが、時として混同されることがあります。ここでは、その違いについて詳しく見ていきましょう。

まず、フレイルとサルコペニアの特徴を簡単に比較してみましょう。

フレイルサルコペニア
定義心身の活力低下と生活機能障害加齢に伴う骨格筋量・筋力の低下
主な症状体重減少、疲労、歩行速度低下など筋肉量減少、筋力低下、身体機能低下

サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢に伴って起こる骨格筋量と筋力の低下を指します。サルコペニアの診断基準は、以下の3つの要素から成り立って

います。

  • 骨格筋量の減少
  • 筋力の低下
  • 身体機能の低下

サルコペニアは、加齢による筋肉量の減少が主な原因ですが、その他にも低栄養、運動不足、慢性疾患などが関与していると考えられています。サルコペニアが進行すると、転倒リスクの増加、日常生活動作(ADL)の低下、生活の質(QOL)の低下などにつながることが知られています。

フレイルとサルコペニアの関連性

フレイルとサルコペニアは密接に関連しています。サルコペニアはフレイルの主要な構成要素の1つであり、フレイルの診断基準にも含まれています。しかし、フレイルはサルコペニア以外の要素も含む、より包括的な概念です。

フレイルの診断基準には、体重減少、疲れやすさ、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下が含まれており、これらの項目のうち3つ以上に該当する場合にフレイルと判断されます。一方、サルコペニアは主に筋肉量と筋力、身体機能に着目しています。

フレイルとサルコペニアへの対応の違い

フレイルとサルコペニアへの対応には、いくつかの共通点がありますが、それぞれの特徴に合わせたアプローチも必要です。ここでは、その違いを表にまとめてみましょう。

フレイルサルコペニア
運動全身的な運動(有酸素運動、レジスタンス運動)主にレジスタンス運動(筋力トレーニング)
栄養バランスの取れた食事、タンパク質摂取十分なタンパク質摂取、必須アミノ酸補給
社会参加社会活動への参加、孤立防止

フレイルへの対応では、運動、栄養、社会参加を総合的に取り入れることが重要です。一方、サルコペニアへの対応では、筋力トレーニングとタンパク質・必須アミノ酸の十分な摂取に重点が置かれます。

ただし、フレイルとサルコペニアは密接に関連しているため、両者への対応を組み合わせることで相乗効果が期待できます。個々の高齢者の状態に合わせて、適切な介入方法を選択することが肝心です。

まとめ

フレイルとは、加齢により心身の活力が低下し、生活機能が障害された状態を指します。ただし、適切な介入により改善が可能な可逆的な状態であることが特徴です。

フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間に位置しており、このタイミングで適切にケアや支援を行うことができれば、再び元気な状態に戻ることも十分に可能です。一方で、フレイルに適切に対処できなければ、要介護状態へと移行してしまうリスクが高まります。

また、フレイルにしばしば混同されやすい概念としてサルコペニアがあります。サルコペニアは筋肉量や筋力の低下を指す医学的な用語ですが、フレイルはより包括的な概念であり、サルコペニアを含む心身の機能低下全般を表しています。フレイルとサルコペニアへの対応には共通点もありますが、それぞれの特徴に合わせたアプローチが求められます。

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